万博閉幕から半年、スタッフが新たな人生を歩む
大阪・関西万博が閉幕して13日で半年が経過した。会場内で働いていた約2万人のスタッフの中には、閉幕後、新たなキャリアに挑戦する人々が多くいる。祭典で培った経験やスキルは、貴重なレガシーとして、それぞれの人生に息づいている。
ホテルマンとして活躍する元スタッフ
今月9日、大阪の歓楽街・新世界にあるホテル「OMO7大阪by星野リゾート」では、フロントに立つ鈴木亮哉さん(28)が、チェックアウトする外国人客に笑顔で話しかけていた。鈴木さんは、慶応大の宮田裕章教授が手がけたパビリオン「Better Co-Being」のスタッフとして来館者の案内を担当し、そこで磨いた接客スキルを生かし、昨年12月からこのホテルで働いている。
「万博があったから、今ここに立てている」と語る鈴木さん。万博に関わるきっかけは、2005年の愛知万博に遡る。当時小学2年生で、会場が自宅に近く、両親に連れて行ってもらった経験が印象的だった。海外パビリオンのスタッフの気さくな対応に触れ、言葉が通じなくても気持ちが伝わる喜びを感じ、40回以上通ったという。
大学卒業後、和歌山県由良町の地域おこし協力隊員を務めていたが、任期終了時に大阪・関西万博のスタッフ募集を知り、応募した。パビリオンでは、1回に十数人の来館者を案内し、人前で話すのが苦手だったが、次第に自信を持って話せるようになり、表情にも注意を払えるようになった。
会期終盤、星野リゾートが万博人材を対象に社員を募集していることを知り、将来は宿泊業界で起業して地方を盛り上げたいという夢から、経験を積むため門をたたいた。ホテルの仕事は多岐にわたり、特に万博の経験が生かせるのは、宿泊客にホテル周辺のスポットを案内する星野リゾート独自のツアーだ。「『人を喜ばせる』のは、万博もツアーも同じ。やりがいがある」と語る。
漫画で体験を紹介し広報担当に
一方、NTTビジネスソリューションズの福岡ビジネス営業部に勤める江戸美香さん(60)は、NTTパビリオンでスタッフを務めた体験を漫画に描き、社内で評価された。現在は、スキルを生かして広報業務も担っている。
NTTパビリオンの運営には、会期中、グループの社員が交代で1人5日ずつ携わり、江戸さんも案内業務を担当した。短い期間だったが、「一生に一度の体験。記録を残したい」という思いから、漫画で伝えることを決意。自身を主人公にしたストーリーを考案し、著作権に注意しながら生成AIの助けを借りて作画し、体験を約100ページにまとめた。
昨年6月、会社の許可を得て電子書籍として出版。現在は、本来の営業支援に加え、グループのNTT西日本から依頼され、社内サイト用のイラストや省エネの取り組みを紹介する漫画を手がけている。「新しいキャリアにわくわくする毎日。人生を変えてくれた万博に感謝したい」と語る。
企業が即戦力として積極採用
大阪・関西万博で接客スキルや語学力を磨いたスタッフらは、即戦力として企業から高い期待を寄せられ、積極的に採用されている。人材派遣大手のパソナが昨年9月に開いた合同企業説明会には、2日間で計107社がブースを設け、約2500人の万博スタッフが参加した。
採用例としては、星野リゾートが鈴木さんを含め計4人を採用。京阪ホールディングスも6人を雇い、グループが手がける観光案内所などに配置している。阪急阪神百貨店も20~60歳代の約10人を採用し、主に富裕層の接客に従事させているという。
万博は158か国・地域が集い、世界を結ぶ場となった。鈴木さんは「ホテルという場を通して、地域と旅行者をつなぐ架け橋になりたい」と力を込める。閉幕から半年、万博で培ったスキルは、新たな人生の礎として確実に息づいている。



