2002年2月から2008年2月までの73カ月間は、戦後最長の景気拡大局面として広くもてはやされた。この時期は「いざなみ景気」と命名され、多くの経済指標が好調を示した。しかし、齊藤誠氏の著書『競争の作法 ──いかに働き、投資するか』(ちくま新書)は、この局面を主たる分析対象に据え、リーマンショック後の2010年に出版された。本書は、当時の世相が必要以上に楽観的あるいは悲観的であったことを喝破し、質実剛健な議論を展開している。その内容は今なお色あせることはない。
本連載「ライフ #名著は知っている」では、ビジネスに効く名著のエッセンスを識者がコンパクトに解説する。原則として土曜日に更新される。今回の解説者は、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏だ。
出版当時、まだエコノミストとして駆け出しであった唐鎌氏は、本書に多くの付箋を貼り、書き込みをしたという。その跡を今改めて振り返っても、紹介したい箇所は数多い。講演など各所で、唐鎌氏は「腐らない議論」の重要性を説いてきたが、それも本書の「堅実な観察に基づくシンプルな議論の力にはかなわない」という一節に影響されたものだ。
本書では、シンプルで力強い議論が第1章から展開される。具体的には、国民経済計算(GDP統計)に基づき、いざなみ景気の起点となった2002年と、景気拡大のピークである2007年、さらにリーマンショックを挟んだ2008年を比較する。この比較から浮かび上がるのは、日本の人々が「豊かさ」を享受できていなかったという厳しい現実である。
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