京都大学などの研究チームは2024年3月、バラの香りを毎日嗅ぎ続けると脳の構造がどう変化するかを調べた研究結果を発表した。この研究は、アロマテラピーで広く知られるリラックス効果を超え、実際に脳の萎縮を防ぎ、将来的な認知症予防に役立つ可能性を示唆している。
研究の背景と目的
香りがもたらすリラックス効果は広く知られているが、日常的に香りを嗅ぎ続けることが実際の脳の構造にどのような影響を与えるかはこれまで明らかにされていなかった。そこで研究チームは、健康な女性50人を対象に、日常的な香りの使用が脳に与える変化を調べる実験を行った。
実験方法
実験では、参加者を2つのグループに分け、一方にはローズの精油(エッセンシャルオイル)を、もう一方にはただの水を、それぞれ1日2回、1カ月間吸入してもらった。なお、対象を女性に限定したのは、過去の研究から女性の方が嗅覚に敏感で香りの効果が現れやすく、また香りを身につける習慣のない男性は不快に感じて脱落する可能性があるためと説明している。
結果:脳の灰白質が増加
1カ月後に参加者の脳をMRIで撮影して比較したところ、ローズの香りを身につけていたグループにのみ有意な変化が見られた。脳の神経細胞が集まる灰白質のボリュームが、脳全体で増加していたのである。
さらに詳しく見ると、特に記憶や嗅覚の結びつきに関わる後帯状皮質(PCC)という領域のボリュームが増えていることが分かった。このPCCという脳の部位は、アルツハイマー型認知症を発症する際、初期段階で萎縮し始める場所として知られている。
認知症予防への期待
今回の結果は、日常的にバラの香りを嗅ぐという手軽な習慣が、脳の萎縮を防ぎ、将来的な認知症の予防に役立つ可能性を示している。研究チームは、この発見がアロマセラピーを活用した新しい認知症予防法の開発につながると期待している。
Source and Image Credits: Keisuke Kokubun, Kiyotaka Nemoto, Yoshinori Yamakawa, Continuous inhalation of essential oil increases gray matter volume, Brain Research Bulletin, Volume 208, 2024, 110896, ISSN 0361-9230, https://doi.org/10.1016/j.brainresbull.2024.110896.



