ワコム(東京都千代田区)の筆頭株主である英国の投資ファンド、アセット・バリュー・インベスターズ(以下、AVI)は5月14日、ワコムの代表取締役社長と、社内の中核事業を統括するCOOの解任を求める株主提案を行った。AVIは、同社の株式13.8%を保有する大株主であり、長年にわたり企業価値向上に向けた対話を続けてきたとしている。
業績低迷とガバナンス不全
しかし、過去5年間にわたり、ワコムの株主総利回り(TSR)は配当を考慮した株価指数「配当込みTOPIX」に劣後している。また、円安の影響を除いた営業利益は2021年3月期から約4割減少しており、AVIはこうした状況の一因として、代表取締役社長による「密室経営」と、会社資産の私物化を挙げている。
私物化の実態
その一つが、「住友不動産新宿グランドタワー」(東京都新宿区)31階にあるワコム東京支社フロアの利用実態だ。同支社の年間賃料は数億円規模と推定されるが、その一角、見晴らしの良い角区域が「ダンススペース」として専有されているという。AVIの調査によれば、代表取締役社長の娘でありダンサーのMIDORI氏が、少なくとも5年以上にわたり、ダンスの練習や撮影に使用していることが判明した。
このスペースの年間賃料相当額は500万~850万円と推定され、AVIはこうした公私混同が従業員の士気を著しく低下させ、企業価値を毀損していると主張する。
不適切な関連会社との取引
さらに、代表取締役社長が自ら設立し代表取締役を務める一般社団法人「コネクテッド・インク・ビレッジ」(CIV)に対して、ワコムから総額2億8000万円もの資金が拠出されていると指摘。ワコムとCIVが共同主催するイベント「コネクテッド・インク」は、社長就任以降、技術展示からアート色の強い内容へと変化し、MIDORI氏もパフォーマーやダンサーとして毎年出演しているという。
AVIは、ワコムの取締役会が経営の監督機能を果たしておらず、ガバナンス不全に陥っていると判断。社内の研究開発予算が制限される中で不透明な支出が続くことに危機感を示し、代表取締役社長および中核事業COOの解任と、新たな社外取締役の選任を提案した。AVIは「株主提案に賛同いただくことが株主共同の利益に資する」としており、適切な役割構造への刷新を通じて、ワコムが本来持つと想定する1株当たり1300円の価値の実現を目指すとしている。



