Windows Centralは、「6 biggest Microsoft Build announcements: How they'll reshape Windows 11 and set up the next generation of AI devices」において、Microsoftが開発者向けイベント「Build 2026」で発表した主要トピックを総括し、Windows 11と次世代AIデバイスの方向性を大きく左右する6つの注目ポイントを紹介した。今回のBuildでは、AIを前提とした新しいコンピューティング環境の構築と、Windowsの再活性化が大きなテーマとなった。
WinUI 3でWindowsを高速化
Microsoftは開発者に対して、Web技術ベースのハイブリッドアプリよりも、WinUI 3フレームワークを使ったネイティブWindowsアプリの開発を強く促した。ネイティブアプリはWebラッパー型のアプリより高速かつ安定して動作するため、Windows 11の操作性や応答性の改善につながるとMicrosoftは説明している。Microsoftでは、スタートメニューをはじめとしたWindows 11の内部コンポーネントをネイティブ実装に置き換える「Windows K2」構想を推進しているが、サードパーティの開発者にも同じ方向性を求める形になった。Microsoftからは、GitHub CopilotおよびClaude Code向けのWinUI専用エージェントプラグインを提供することでWinUI 3への移行を支援する。こうしたネイティブ化の取り組みは、後述するAIエージェント中心のコンピューティング環境を支える基盤として位置付けられている。
AIでARM移行を加速
ネイティブアプリ開発を推進する上での課題のひとつに、x86アプリのARM版Windowsへの移植がある。MicrosoftはBuild 2026で、AIエージェントを活用したx86アプリのARM移植を支援するセッションを開催した。このセッションでは、Qualcomm Snapdragon X搭載PCと、NVIDIAの新プラットフォームであるRTX Sparkの両方を対象に、AIを使用してx86アプリを効率的にARM版に移植する方法が紹介された。ネイティブ移植することで、ARMアーキテクチャのパフォーマンスを最大限に活用できるというメリットがある。BuildのキーノートでNVIDIAのJensen Huang CEOは、これまでに作られたすべてのWindowsアプリをRTX Spark上で動作させると明言しており、ARM向けのアプリ不足の解消に向けて本腰を入れる決意を表明した。
Microsoft IQとScoutでAIエージェントを強化
Build 2026でMicrosoftが力を入れていたテーマの一つがAIエージェントだ。その実用化に向けて発表されたのが「Microsoft IQ」と「Scout」である。エージェント型AIの性能は使用者が与えるコンテキストに強く依存している。ビジネスシステムにおいては、企業がそれまで積み上げてきた固有のノウハウを、どのようにしてAIに共有するかが大きな課題になる。Microsoftはこの課題を解決するための新しいツールとして「Microsoft IQ」と「Scout」を発表した。Microsoft IQは、社内の知識やWeb上のデータを収集して統合的にAIエージェントに連携することができる新しいコンテキストレイヤーである。これによって、AIエージェントは特定のデータに基づいた具体的な結果を導き出せるようになる。ScoutはTeamsやOutlookなどと連携して動作する業務用のパーソナルエージェントで、ユーザーの働き方を理解して日常のタスクを積極的に実行できるという。
RTX SparkでローカルAI時代へ
Build 2026の象徴的な発表となったのが「Surface RTX Spark Dev Box」だ。これはNVIDIAのRTX Sparkアーキテクチャを採用する小型開発マシンで、ローカル環境で最大1200億パラメータ規模のAIモデルを実行できる点が大きな特徴。ネイティブGPUパススルー対応のWSL2や、CUDAのフルサポートも備えている。Microsoftのデベロッパーツール群がプリインストールされており、Windowsアプリだけでなく、あらゆるソフトウェアやAIエクスペリエンスを開発する全開発者を対象にした機材として位置づけられている。MicrosoftはAI処理をクラウド依存から分散させ、デバイス側でも高度な推論を行う方向へかじを切っており、Surface RTX Spark Dev Boxはその先駆的な存在になる見込みだ。
MAIでOpenAI依存を低減
MicrosoftはBuild 2026で、自社開発の新AIモデル「MAI」シリーズを7モデル公開した。これらのモデルは蒸留(既存モデルの知識転移)を一切使わずにゼロから構築されており、OpenAIへの依存度低減と開発者コスト削減を目的としている。ラインアップのトップに位置するのは同社初の推論モデル「MAI-Thinking-1」だ。効率性とパフォーマンスを重視して設計されたこのモデルは、トークンコストが低いという特長を持ちながら、コーディング能力において、同社によるとOpus 4.6に匹敵する性能を実現したという。外部モデルに頼らず自前のAIスタックを充実させることで、MicrosoftはAIサービスの主導権を内製化する戦略を明確にした。
Project Solaraで次世代PCを模索
Microsoftが今回Build 2026で示したAIエージェント中心のコンピューティング構想。その延長線上にあるのがProject Solaraだ。MicrosoftはBuild 2026で、「次世代コンピュータ」の構想として「Project Solara」を発表した。これはWindowsではなくAndroid Open Source Project(AOSP)上に構築された軽量かつセキュアなOSで、従来のアプリ中心の操作体系ではなく、AIエージェントがユーザーの代わりにタスクを実行するエージェントファーストなデバイスとして設計されている点が大きな特徴。内部では「Agent Shell」が複数のクラウドベースのAIエージェントを動的に読み込む仕組みを持つ。画面サイズや操作モード(視覚・音声・タッチ・マルチモーダル)に応じてUIが自動的に適応するという。現時点では「Badge Concept Device」と「Desk Concept Device」の2種類のプロトタイプが公開されている。Humane AI PinやRabbit R1といった先行AI専用デバイスが市場で苦戦した経緯があり、Microsoft自身もこのカテゴリーが普及するかどうかは確約できない段階だと認識している。ただしMicrosoftは、エージェント型コンピューティングの波が来たときに主導権を握れるよう、今からプラットフォームの整備を進める姿勢だ。
今回の発表からは、Microsoftがアプリ中心のPCからAIエージェント中心のコンピューティングへの移行を本格化させていることがうかがえる。Windows 11はその中核となるプラットフォームであり、AIネイティブなPCや新しいデバイスの登場によって、今後数年のうちにPCの役割そのものが変化する可能性があるとWindows Latestは伝えている。



