日立製作所は6月17日、OpenAIとの連携を本格化し、先進的な人工知能(AI)技術を活用したレガシーシステムのモダナイゼーション(現代化)とサイバーセキュリティ強化に取り組むことを発表した。両社の技術やノウハウを組み合わせることで、企業や社会インフラにおけるAIトランスフォーメーション(AX)の加速を目指す。
AIモダナイゼーションの確立と人材育成効果
日立とOpenAIは、2025年10月に連携に関する覚書(MoU)を締結して以来、日立のデータ活用基盤「HMAX」をはじめとする「Lumada」ソリューション強化に向け、OpenAIが有する先進的なAI技術の活用検討を進めてきた。今回の取り組みでは、多くの企業で熟練エンジニアの引退などによるレガシーシステムのブラックボックス化がAXの課題として顕在化している点に着目。同時に、サイバーセキュリティ環境の変化に伴い高度なセキュリティ体制の構築が急務となっていることから、基幹システムのモダナイゼーションとセキュリティ強化においてAIを活用した課題解決を本格化するに至った。
Codexと日立の知見を融合
今回の取り組みでは、日立とOpenAIのForward Deployed Engineers(FDE)が連携。OpenAIのAIエージェント「Codex」が持つ高度な解析技術と、日立が長年培ってきたミッションクリティカルシステムに関する知見を融合させる。既存システムのコード解析を通じて設計を可視化し、安全かつ効率的な移行を支援。上流設計の把握から新システムへの移行テストまでの一連の工程にAIを適用することで、信頼性の高いアプローチの確立を目指す。
今後は、モダナイゼーション事業の統括・推進を担う「Modernization CoE」が中核となり、このアプローチを活用したAIソリューションの開発を進める。さらに、「モダナイゼーション powered by Lumada」に組み込んだ形で、金融機関をはじめとする幅広い業種向けにソリューションを展開する計画だ。
サイバーセキュリティ強化への取り組み
日立は、OpenAIが提供するサイバーセキュリティ向けプログラム「Trusted Access for Cyber(TAC)」を通じて、専用AIモデルへのアクセスを取得する予定。OpenAIの「Daybreak」に基づく防御重視のフレームワークのもと、適切な安全策やガバナンス、人間による監督を前提に、脆弱性の特定や優先順位付け、修復・検証など正当な防御目的での活用を検討する。
得られた知見は、日立のセキュリティ専門組織「Cyber CoE」が自社内で“カスタマーゼロ”の取り組みとしてシステム検証を推進するとともに、今後のサイバーセキュリティ強化に活用する。
実践的なFDEケイパビリティの向上
今回の連携により、モダナイゼーションとサイバーセキュリティの両領域に強みを持つ日立の実践的なFDEケイパビリティ向上を目指す。得られた知見は、同社のAI社会実装を牽引する専門組織「Frontier AI Deployment Center」がハブとなり、順次HMAXへ統合して活用。継続的なHMAXの高度化によって顧客への提供価値を最大化する。
日立の德永俊昭社長は「レガシーシステムのモダナイゼーションとセキュリティ向上はAI時代の重要課題」と指摘し、「OpenAIとともに、安全で信頼性の高い社会インフラの革新に取り組めることを誇りに思う」とコメントした。同社はOpenAIとの連携をさらに進化させ、両社のFDEにおける知見を活用してLumada・HMAXを継続的に強化することで、顧客の強靭なシステム構築・運用を支援し、社会のAX加速に貢献するとしている。



