第85期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は6月11日(木)に開幕しました。この日はA級1局とC級2組12局の計13局が行われました。その中で、A級の永瀬拓矢九段と近藤誠也八段の対局は95手で永瀬九段が勝利。矢倉対早繰り銀の熱戦を制し、挑戦に向けて好スタートを切りました。
挑戦目指す第一歩
前期は糸谷哲郎九段とのプレーオフに敗れ挑戦を逃した永瀬九段は、気分を新たに第83期以来となる挑戦を目指します。一方、2年目の参戦となる近藤八段は、6勝3敗の好成績で終えた昨年を上回れるかが注目されます。本局は永瀬九段の先手番で始まり、後手の近藤八段の角道を止める手が早繰り銀を誘発。永瀬九段は藤井聡太名人との名人戦で類似の局面を経験しており、水面下で研究が進む局面か、ともにテンポよく指し手を進めました。
一段落した局面は形勢互角で、先手は敵の金銀の連携を乱していること、後手は敵玉そばに作った拠点を持っていることをそれぞれ主張しており、順位戦らしいこってりとした押し引きが続きました。形勢が動いたのは夕食休憩後のことです。中央に跳ね出した近藤八段の桂は一見味よい活用でしたが、これが永瀬九段の目を光らせました。
大きかった桂得
攻めを急ぎたくなる局面で、じっと角を引いたのが永瀬九段の充実ぶりを示す好手。飛車の横利きとの連携で丁寧にこの桂を取り切ることに成功しました。「桂の高跳び歩の餌食」となった本譜の展開を思うと、近藤八段としては代えて自陣で遊ぶ右銀を活用する手が優ったようです。首尾よくリードを奪った永瀬九段は左辺から飛車を成り込み優位を拡大します。
終盤に入っても永瀬九段の指し手は乱れません。逆転を目指す近藤八段が銀を打ち込んで王手をかけたとき、これを取らずにさっと玉をかわしたのが当然とはいえ好手。直後の歩突きが詰めろ角取りの痛快な決め手となって、このまま近藤八段を投了に追い込みました。終局時刻は23時45分。中盤以降、一度も形勢を譲らなかった永瀬九段の快勝譜となりました。
水留啓(将棋情報局)
永瀬九段は2回戦では伊藤匠二冠との対局が予定されています(写真は第11期叡王戦本戦準決勝のもの 提供:日本将棋連盟)。



